飼育の基本要素 

生物を飼育するに当たって基本となる物の一つに食事がある。

栄養のバランスが取れた餌を与えていけば良いのであるが、それを飼育下でやるとなると大変である。

蛇に関しても、完全肉食性で、哺乳類と鳥類しか食べない種であっても、野生では様々な種類の哺乳類や鳥類を食べて栄養のバランスを摂っていると考えるべきである。

蛇の餌について
蛇はネズミだけを食べている。だからネズミだけ与えていれば蛇は飼える。

そう考えておられる方も少なからず居るが、蛇の食性は種によって様々であるからこれは誤りであるし、蛇に餌を食べさせる事自体基本的に難易である。

CB物が大半のコーンスネークの愛好家さんで、それしかやったことの無い方だとアジアの一癖も二癖もある蛇に戸惑うかもしれない。

蛇の餌は、大きく分けて次の通り三つに分けられる(勿論種類によって食性はさらに細分化するが)

恒温動物食
これは、哺乳類と鳥類を食う蛇の食性であり、この食性を持つ蛇は種類やサイズに合わせた餌を仕留めて食べている。

ハブやマムシやボアやパイソン(ニシキヘビ)の仲間にはピットと呼ばれる温度センサー(生物界で最も優れた温度の受容器官で、サーモグラフィーの様に獲物を見ることができる上に立体的に見える)が付いており、餌の温度が高ければ食欲を示すが、温度が低かったり冷たかったりすると全く反応しない。

 また、変温動物に比べ腹持ちがよく、ボアやパイソンが大きな餌を食べた時には下手したら一ヶ月、長くても一年の絶食に耐えられる。絶食は理想ではないし消化器官を弱らせるので絶食は控えたほうが良いと思うが・・・。

当サイトで、これに属する蛇・・・タイワンスジオ・カナンスジオ・アオダイショウ・タカサゴナメラ

変温動物食
これは、魚類・ミミズ・両生類(主にカエル)・爬虫類(主にトカゲ・ヤモリ・蛇)・昆虫類(ラフグリーンスネークなどがこれに当てはまる)・マイマイ等の冬になれば冬眠するような餌を食べている蛇の食性である。

腹持ちの悪いのが欠点で、早くて二週間、遅くて半月で痩せてしまう。さらに、そのためか大食いであり、一気に大量に食べるので毎日か二日に一回のペースで食うだけ与えたい。

この仲間を飼育するに当たっては、それぞれの食性に合わせて雑魚・メダカ・金魚・ウキガエル・アマガエル・トノサマガエル・トウキョウダルマガエル・アカガエル・オタマジャクシ・ニホンカナヘビ・ニホントカゲ・ホオグロヤモリ・ニホンヤモリ・カタツムリ・コオロギ等手に入るものを与えていくと良い。

また、ピンクマウスに餌付けることが可能な種なら餌付ければ餌の入手や栄養面から大分楽になると思うが、管理人一個人の考えとしては、例えば、普段カエルしか食べない動物にピンクマウスを食うように仕向けたとして、その個体の本来持つ消化能力と釣り合いが取れるのか?消化器系に負担はかからないのか?と思う。

 寄生虫の問題もあるので早めに冷凍餌に餌付けて、カエル等の餌も冷凍して与えると良いと思う。

当サイトで、これに属する蛇・・・ホンドヒバカリ(両生類うやミミズや魚を食べる)・シロマダラ(蛇・トカゲ・ヤモリを食う)・サキシマバイカダ(トカゲ・ヤモリを食う)

両方を食う食性を持つタイプ
本来は先述した二つのどちらかに偏る場合が多いものの、両方を餌にすることのできる蛇である。

自然界でも色々な動物を餌にしているのだから飼育下でもそれを再現してやりたいものだが、中々難しい。

大抵の場合はすんなりマウスに餌付けることができるのでマウスを与えれ居れば問題無い。

餌付かない場合は、例えばシマヘビの様にカエルを好んで食べる動物には、一回カエルを与えて、二回目にカエルの血やぬめりを付けた餌を与えると勢いで食べ、その後は蛇が「これも食えるんだ」と学習するのでマウスを与えると良い。トカゲばっかりを好んで食べる個体にも使える。

アカマタのように本来消化器官がそんなに強いものでないものにマウスを与えるときには個体が食えるサイズより一回り小さい餌を与え、その回数を若干増やすと良い。

有名なオオアナコンダやペットとして有名なカリフォルニアキングスネークはこの仲間に属している。

繁殖を狙うときには婚約相手が食われる恐れもある為に目をそらさないこと。両生類しか食わないような連中以外、同居は不可能な場合が多い。

当サイトで、これに属する蛇・・・サラサナメラ・シマヘビ・アカマタ

餌の与え方
ここではナミヘビを中心に書いていくのでボア・パイソンは省く。

ただ、基本的な事は似たようなものなのでこれから蛇を飼おうと考えている方は一読しておいても損は無いと思う。

先に申しておくと、蛇を飼う上で拒食(何らかの原因で餌を食べなくなる事)と言う現象を抜きには語れない。

それが起こったときには冷静に飼育環境を見直すことである。蛇は餌を食べたいが食べられない状態(怖くてそれどころではないとか体が痛むとか)にあるのだと考えて欲しい。

また、基本的には餌の大きさは成長段階に合わせて大きくしていく。
ショップでピンクマウスを与えてください!と言われたりすると思うけれど、それは、そのサイズがピンクマウスしか食えないサイズだからである。大きくなれば餌が大きくなるのは当然である。

目安として、胴の一番太い部分より少し大きいくらいのサイズが良い。頭を大きく発達させる為にやや大きめの餌を与えるのも手。

ボア・パイソンと同様にいつまでも小さい餌を与えているとそれだけ絞め殺す頻度が多くなり、蛇も嫌になってくることすらある。
餌を呑む
▲蛇は体が細い割りに比較的大型の餌を呑む事も可能。ただし、失敗すると吐くことも考えられるので慎重に▲

餌を与える間隔
蛇を飼い始めた場合、それがベビーなのか?アダルトなのか?で変わってくると僕は考えている。

先ず、ベビーならば初動成長(成長期の急激な成長)を考慮して多めに与えないと丈夫で大きな子には育たないと思う。

この期間は大体二年だと思ってよく、先ず、イヤリングと呼ばれる生後一年まで思いっきり育てることを目標としていただきたい。

その為には食いの良い個体を育てたほうが良いのだが、蛇にも性格があって、食の細い個体も居る。弾みで勢いが付けば良く食べて大きくなるものだが、そうならない個体も多いし、勢いが付いても最初から食う個体のサイズには到底及ばない。

なので、標準サイズを気にするよりも、手元に居る個体の出来る限りの最大サイズを目指して飼育してもらいたいと思う。

観察した結果を述べると我が家の個体に胴回りと同じくらいの大きさの餌(これ基本)を与えるとナミヘビの場合は大体二日でお腹が減るようだ。
人が来るたびに寄ってきたりケージの中を徘徊したりして餌を探す。

動きや反応が良いときは大体腹が減っている。(ただ単に落ち着かないって事もあるものだが)
僕の場合はこんな感じで育てる。

・ハッチリング〜生後二年:毎日〜二日に一回。場合によって一週間に一回(ハッチから少し成長した蛇の場合、ピンクマウスメインであれば毎日給餌する。消化器官を休めるために一日だけ絶食させることもある。ファジーなら二日に一回づつ給餌していく。これは餌が大きい事、蛇自体に対して餌が大きい場合はお腹の膨らみ具合や活動による食欲の意思表示等を考慮して微調整を行う。青大将やスジオのイヤリングサイズであれば成長具合にもよるがリタイアを与えるのでこの場合は一週間に一回位である。)

・生後二年〜老齢:一週間〜二週間に一回。

爬虫類(両生類もそうだけど)の場合は、大人になると基本的に給餌回数が減る。それは代謝などもそれほど活発で無くなるのでそれ程栄養分を必要としなくなるからだ。

過剰な栄養分は肥満を招き、内蔵に負担をかけるので気をつける。
なお、上記のデーターは恒温動物食のデーターであり、変温動物食の場合は以下の通りである。

我が家のシロマダラの場合

・ベビー:二日に一回ヤモリの尾と足(まだこれくらいしか食えないサイズ)

我が家のヒバカリの場合

・アダルト:金魚の小赤と呼ばれる縁日で金魚すくいに出されるのと同じサイズの大きさの金魚を食うだけ毎日与える。

また、うちではシロマダラの餌には、入手と管理のしやすさから冷凍ヤモリを与えているが、寄生虫を視野に入れた点から見ても冷凍物は大変お勧めである。

当たり前の事ではあるが、冷凍ヤモリはぬるま湯で解凍して与えると良い。冷凍物をそのまま与えると消化に熱が必要な爬虫類は消化できずに餌が腹の中で腐敗するか下痢をする。

また、蛇は餌を呑んだ後に水を飲んで消化吸収を助けるので給餌の後には新鮮な水を飲めるようにしてやりたい。これが無いと消化吸収が遅れてしまうようだ。

拒食に関して
蛇を飼う者の宿命と言うかなんというか・・とにかく蛇は急に拒食し、それも腹が減っても生命の危険を感じても食べないでいる為に餓死すら起こりうる。

原因は様々で、大体飼育環境が悪い為に起こる。他には周期的な物や健康状態の悪化や生理的なもの等も考えられるし、餌が気に食わない等もある(特にボア・パイソンに見受けられるそうだ)
具体的に下に述べてみた。

期的な拒食
これは日本のWCのジムグリの様に夏場は大体餌を食わなくなる習性を持つ蛇(ジムグリはCBなら夏でも餌を食べるそうだが)や、光周期(日照時間の変化)や温度変化から冬が近いことを悟り、冬眠モードに入る為に起こる物で、こういう場合は、早いうちに冬眠(クーリング)させてしまった方が良いと思う。

餌を食べないのに食わせようとして無理やり起こしておくと、その分無駄に体力を使い、痩せていく。個体を落とす原因にもなるのだから低温でゆっくり休ませて、3月中旬〜下旬の冬眠明けに、嗜好性の高い活餌(殺したてのマウスの方が良い)を与えて元気付けると良い。

この際、冬眠中に消化器官が弱っている事も考慮して小さいサイズ(アダルトを日頃与えていたのならホッパー。ホッパーを日頃与えていたのならファジー。

ファジーを日頃与えていたのならピンクマウス。ピンクマウスを日頃与えていた個体にはピンクマウスを半分に切った物)から給餌を始めて行き、一週間〜二週間くらいかけて元のサイズに戻してやると良い。

育環境の問題
これは飼育者から見たら、え?なんで?って思うような単純な理由で餌を食わなくなると言うものから、あぁ、確かに・・・・と納得するような深刻?な問題まで幅がある。

餌を食わないのは餌を食える環境でないために食う気分になれないと言うのもある。

考えてみて欲しい。例えば貴方が、悪党に捕まって、檻に入れられ、どこからか明日には貴方は〆られると聞いたら貴方は悪党から差し出された飯を食べれますか?毒が盛ってあるかもしれないし、それよりもどうやったら逃げ出せるかとかそういう事を考えていたら飯なんて普通は食べれませんよ。それと同じです。

食える心境で無いのに食え食え押し付けたりハンドリングしたりしていたらいつまでも食いませんよ。

それよりも、新鮮な水を与えて、暗く暖かく振動も無い場所にケージを置いてやることです。

図太い性格の子は来た初日から餌を食べますが、そうでない子も居るという事を知って欲しい。

うちのサラサナメラは、蛇は狭いところで飼育できると言う常識を覆すような個体で、狭いとストレスを感じて餌を食わなくなるようだ。

以前、小さなケージで飼育していた時に、徘徊してばかりで全く餌を食べなかったのがが、広いケージにした途端に食べるようになった。
また臆病な蛇はシェルターが無いだけで拒食したりもするし、床材が気に入らないとか環境にうるさい面がある。

温度が低いとか、温度が高すぎるとか、一部湿った場所が無いと駄目だとか、床材が湿りすぎているとか(うちのシロマダラがそう)でも拒食する要因になる。

とにかく飼育本は役に立たないくらいの幅があるので目の前に居る蛇の行動や餌を食べていた時の環境に近づけたりして模索しなければならない。

なお、頻繁にレイアウトを変えるとストレスになる恐れもある。
アジアの蛇はこういうのにうるさい連中が多く、それ故に僕はコーンより飼育難易度が高いと思っている。

コーンやボールが普及して蛇を飼う人も増えたため、それこそが蛇・・つまり、蛇は噛んでこない、簡単に餌を食う、飼育が簡単な動物と言う固定概念を持った人が出てくるのではないだろうか?別にどっちが本当の姿と決め付ける訳ではないが、野生動物としての蛇は「臆病・恐怖による噛み付き攻撃・餌を簡単に食わない上に一癖も二癖もある」である。言いたいのは蛇は本来は飼育の難易な動物だと言うこと。

そして、良くある質問で一番多い拒食の原因は
低温飼育だ。
蛇はその種類によって快適な温度が異なり、ボア・パイソンなら30℃近くあった方が好調だったりするし、ナミヘビ類なら26〜28℃もあれば十分だ。

で、やはり蛇を飼い始めて間もない頃・・と言うか、ショップで必要な機器を薦められる時に、特にアクアショップで買った場合はそうだと思うが、
パネルヒーターで十分ですが売り文句。

そりゃ、気温が適温に保たれている部屋ならば十分ですよ。
腹部を暖めて消化を助けますからね。

春〜夏なんてこれで十分。

が、しかし、冬は違う。

拒食の質問が急に多くなるのが冬場で、ここで疑うのが低温飼育である。
皆さん、夏場のノリで冬に突入してしまうのだ。

大体アジアの蛇は冬眠させてしまうので、どうと言うことは無いけれど、これらのベビーや、飼育者が多いカリキン(カリフォルニアキングスネーク)やコーンスネーク等は良く拒食になるようだ。

そこでこの辺について触れてみたいと思う。

先ず、一般的な家庭で、それも飼育数が少ない家庭で蛇を飼う場合、部屋を暖房で丸ごと暖めようなんて考える方は少ない筈。

そうなると、蛇のケージだけ暖めている事になるのだけれど、一般的な家屋では夜間・・・と言うか朝方の冷え込みは激しくて毎日のように寒い朝がやってくる。

パネルヒーターで頑張っていてもやはり限界があるらしく、大丈夫なのは大丈夫なのだけれど、駄目な奴は調子を崩し、拒食をする。

そもそもパネルヒーターと言う器具は床暖房のようなもので空気を暖める事はそれこそ密封にでもしない限り無理がある。

そこで使用したいのがナイトライトやひよこ電球と言った夜間の保温に最適な電球タイプの道具だ。

ひよこ電球は熱くなりすぎるので必ず専用のカバーを電球に付けて、サーモスタットを使って温度調整をする。

ひよこ電球用のサーモスタットは園芸店などでも買えるし、爬虫類用のを使っても良いと思う。

W数は、60cm水槽程度なら60Wもあれば暖まると思うけれど、外気温に左右される場合が多いので注意。

熱帯魚に使う、デジメーターと言う最低気温と最高気温を計測して記録してしまう温度計があると良い。と、言うよりは必携。これは使える!

多分、ショップなどの接客でこれを勧めてくれるスタッフさんは全体的に少ないとは思うけれど、これは必要なんで絶対買ってください。
便利なんで。

で、この最低最高の温度が測れる温度計を使い、一日のうちで最も温度が高い時間(言うまでも無く日中)と、低い時間(多分明け方の4ー6
時)の温度を記録して、このデーターを元に保温の見直しをしましょう。

こうして温度を徹底すれば、大方冬場の拒食は改善されます。

温度の見直しをしたら、いつもより小さい餌を与えてみたりしてください。これで食べれば問題無いのですが、拒食が長すぎて食欲すら湧かないような個体には、活マウスを与えると良いと思います。

入れっぱなしにした時に餌のマウスにペットが攻撃されたりするのを防ぐ為に(皆馬鹿にして信じませんが餌動物って強いんですよ。攻撃力の高いネズミの一撃、鳥の一突きで蛇は怖気づく事も)、抵抗する術の無いピンクマウス〜ファジーを与えるのが無難でしょう。

かなり残酷なのですが、蛇を元気にする為には仕方がありません。
普通はこれで餌を食べて元気になります。

活餌を一回与えて食べたら、次はいつも通り解凍した冷凍のマウスを与えます。

これで食べたら先ず大丈夫。

二回、三回と一日おきくらいに小さい餌を与え、その都度食べたら安心できるので、通常の餌サイズ・給餌周期に戻します。

もし、活餌の段階で食べない場合は、強制給餌に踏み切る前に一度獣医に見せ、診断していただく方が賢明です。

強制給餌はもう万策尽きた時のみにすべきです。死亡率も高い事を認識して下さい。




の問題
哺乳類を食う蛇にカエルを与えて食わなかったと嘆く・・等というのは論外で勉強しなおせ!のレベルであるから省く。

よくあるのは、餌の大きさが大きいとか毛が生えているから嫌だとか(ツマベニナメラがそうらしいですね)言う問題である。

哺乳類には興味を示さずに鳥を食う、スズメじゃないと食わないとか、セキセイインコより十姉妹を好むとか、ニシキヘビの凄い個体はガチョウよりサルが好きだとか・・そういうのも居るそうだ。

身近なものでは、ハムスターじゃないと食わないとか、マウスが白だから食わないとかだろうか?幸か不幸か管理人はそういう個体に当たったことは無い。

しいて言えばウキガエルに全く興味の無いヒバカリとシマヘビくらいか。
あの時は、一切逆らわずに好みの餌をそれぞれ与えた。餓死されるくらいなら高くとも好む餌を見つけて与えて、そこからコストが掛からずに手に入りやすい餌に餌付ければ良いと思う。

康状態の問題
蛇を含む野生動物は、弱みを見せた時点で捕食されてしまう。
それ故に飼育下でも弱ったそぶりを見せない。蛇の場合、拒食と言う形でそれが現れたりもするが、死ぬ一歩手前まで分からないことが多い。可能なら月一で健康診断に行くのも得策かと思われる。

良くあるのが、口の中が傷ついて炎症を起こし、膿がたまるマウスロットと呼ばれる口内炎で、酷くなれば顎が変形して肺炎も誘発する恐ろしい病気なのだが、これに掛かると口の中が痛むので当然餌を食べなくなる。

また、病気とは違うが、大半の蛇は脱皮前、体がくすんで白目になったりしている時は餌を食べない。脱皮し終わった直後に食欲が戻るから心配しなくても良い。これに気が付かないで餌を与えて食ってくれないと心配になるものである。

脱皮不全で目に皮が残って最悪の場合視力低下(あるいは失明)すると当然餌を食わなくなるので注意が必要。

以上、具体的なものを挙げてみた。拒食になった時は慌てず、冷静に問題解決していこう。

餌を食べた直後の取り扱い
蛇の仲間は餌を丸呑みする。そして強力な消化液で(噛み付いた時点で既に消化し始める)獲物を消化していくのだが、この消化し終わるまでの間はじっとしている。お腹が重たくて早く動けないので敵に捕まりやすいからだ。

オオアナコンダ等はこの期間にハイエナ等の襲撃を喰らって昇天する事もあると言うから、蛇にとってとても危険な状態である。
なので、餌を食べた蛇を掴んだり刺激を与えたりすると逃げ延びる為に吐く。

蛇の歯は内側に生えていても、顎が180度開くので吐くことは容易い。吐くと物凄く衰弱するので吐かせ無い様にしたい。
また、WCの用心深い蛇は呑んでいる最中に危機を感じた瞬間呑むのを止めてしまう。

大分、マウスを呑んでいて、これをやられると結果的に吐いたのと同じ様に衰弱する。

吐いて衰弱したら、1週間〜2週間は安静にし、給餌は小さめの餌から再開して体調を整えたら通常の餌に戻す。

蛇が餌を食べている時は電気を消したり付けたり、あるいは振動等にも気を配り、絶対刺激しないようにしよう。

餌を発見した時の蛇の心理
徘徊している蛇や眠りから覚めた蛇に餌を見せると一瞬動きが止まる。その後、即効で喰らい付く蛇も居れば大分うろついてから食う蛇など様々である。

共通して言えることだが、餌を見つけた時の反応から察するに明らかに考えている!
何を考えているかは分からないけれど、多分、餌なのか?生きているのか?死んでいるのか?襲い掛かってこないか?回りに敵は居ないだろうか?今食べようか?後で食おうか?頭はどっちか?(蛇は獲物を頭から呑む習性がある)餌と格闘するスペースはあるか?絞め殺す必要があるのか?etc
と、言うわけで、ここに蛇の気持ちを考えながら給餌をする必要性が出てくる。

舌をペロペロだして伺っている蛇にマウスをぶつけたりすれば忽ち食欲が失せて食べてくれない。蛇ペースで、かつこの食欲が消え失せないようにしなければならない。

一番楽なのは置き餌で、解凍した冷凍マウスを蛇から離れた場所にそっと置き、蛇が出てくるのを待つ。

蛇の嗅覚は大変優れており、自分の住んでいるケージに餌が投入された事くらい目で見なくても分かる物だ。
腹の減った蛇ならばすぐ餌を探しに出てくる。

蛇が寝ていたらそっと息を吹きかけたり、食いがいまいちなら逃げる物を追う蛇の習性を利用して木箱にネズミを追い込んだり・・・・・水を替えて新しい水を飲みに出て来たときに餌を発見するようにしても良いし、ケージ内の蛇の通り道にマウスを置いておいても良い。

共通して言えることは、蛇を驚かさないことと食欲を示している蛇に刺激を与えない事。また環境慣れしていない蛇やタカサゴナメラのような神経質な蛇は人が見ている・餌が激しく動く(暗くすれば餌のほうが動きを止めることもある。

特にヒヨコや鶉)・餌に人の匂いがついている・ヒヨコの場合は卵を消毒した時のホルマリンの匂いが染み付いている(成長させて初列風切り羽が二・三生えた所で与えれば良いだけ)・明るすぎる・周りの振動が気になる等怖くて餌を食うような心境でなかったり不安になると餌を食わない。

また餌をやる前にハンドリングしたりするとそれがストレスになり、餌を与えても食べない場合もある。

餌に飛びついて噛み付いて、さぁ!呑もう!とか巻きついて絞め殺している(冷凍の場合は絞め殺しているつもりになっている)時に無神経にプラケースの蓋をバン!と閉めたりすると驚いて止めてしまうこともあるし、ケージの傍で物を落としたりしても止めることがある。

この場合、暫くすれば咥えなおして呑み始めるのだが、そうならない個体も存在するので蛇の給餌前後は気を使ってやること。

餌を入れた瞬間噛み付いて呑もうとする個体は大体図太い子が多く、普通にケージの蓋を閉めても大丈夫なのだが、閉めた時のわずかな振動でパッと餌を離す個体だったら呑みこみ終わるまでじっと見ていて(神経質な子なら物陰からね)呑み終わって蛇が次の餌を探し始めそうになったらそっとケージの蓋を閉めてやる等の配慮が必要。アジアの蛇はコーンスネークとは違うので(学名が再編成されてからは属も違うけどね。笑)その辺を慎重に。

余談ではあるが、蛇の巻きつきは本能。しかし、その技量は後天的に磨くものである。練習させると上手くなるし巻きつきは哺乳類や鳥類など力もあって、捕食者に反撃する場合にのみ用いることが多く、絞める必要の無い非力な魚やカエル等は生きたまま丸呑みにする。

餌用マウスの成長段階と餌用動物の種類
項目を設けた理由は、質問が多かったから。
まぁ、これは後々作ろうと考えている用語大典に載せても良いのだが、餌関係と言うことで載せます。
餌用マウスは成長段階により名称が変わってきます。
以下に記載しますマウスの成長段階は上から下に行くほど成長したものとなります。これは基本なので蛇を飼おうと思う方や肉食の爬虫類を飼おうとされる方は覚えて下さい。基本と言うか、もう覚えていて当然位のレベルで、ポロッっと出てくる用語が幾つかありますので、それを後々ページに書いていきたいと思います。


何週令で表記している場合もありますが、以下の通りです。特徴を見れば分かります。

冷凍マウス

・ピンクマウス(別名称:ピンキー)
S・
SM・M・ML・L・LLと店によっては大きさによってさらに細かく分けている場合もありますが、基本的に皆ピンクです。

LLなんて殆どファジーですし。
ピンクマウスとは、生まれたばかりのマウス(ハツカネズミ)の赤子を言います。外見は、毛が生えておらず、目も開いていない赤裸
ラットの場合はピンクラットと言います。
本当に小さな子蛇には、ピンクマウスすら大きいので足や尻尾を与えます。それより大きくなったら体半分を与えますが、ピンキーポンプと言うピンクマウスを押しつぶしてミンチする器具を使えばピンクマウスをそのまま食わせることが可能です。

・ファジ

あいまいな・・と言う意味でファジーと言う言葉が使われますが、マウスでは、ようやく産毛の生え出したマウスの赤ちゃんを指します。

まだ目は閉じています。


・ホッパー

毛も生えそろい、目も開いて跳ね回るようになることからホッパーと呼ばれます


早いものでは離乳を終えた個体も出てくるサイズではないでしょうか?

見た感じではアダルトより小ぶりです。

・アダルト(別名称:Lサイズ)

繁殖能力を備えた成熟したマウスで、誰が見てもマウス。

一目で分かります。

・リタイアもしくはLLマウス(別名称;ジャンボ・オールド)

繁殖適齢期を過ぎた老齢の♂です。見た感じもアダルトより大きく、脂肪分が若干多いそうです。

成長しきった大型の蛇に使えますが、実はサラサナメラ級の親指ほどの太さの蛇でも与えれば苦労こそすれど呑めます。

リスクはあるでしょうが、イヤリング(一年以降)の個体なら呑めてしまうサイズです。

冷凍ウサギ

蛇の餌に使うようなウサギは、ネザーランドドワーフだとかホーランドロップではありません。

蛇の飼育者がこの手のウサギを飼うと周囲から「餌?」と聞かれることでしょう。

考えてみてくださいよ。普通の人間が餌にそんな高価なものを与えますか?

一般人から見たら僕のような爬虫類愛好家は理解しがたいもののように見えますが、普通に人間なので低コストで済ませようと考えますよ。

例えば貴方の家の犬に松坂牛をあげますか?貴方の家の猫にホンマグロの特選大トロをあげますか?一般家庭でそんなリッチな事しませんって(笑)

閑話休題、蛇の餌として売っているのは、大体日本人にお馴染みに白色肉用種と言うあの体が白くて目の赤い大きなウサギです。

普通はボア・パイソンの大きな個体に使いますが、スジオ級の蛇なら呑めそうですね。

冷凍鶏(成鳥・幼鳥)

多分、白色レグホーンと言う、あの一般的な白い鶏。または、ロードアイランドレッドと言う赤茶の大きな鶏。大型の蛇向き。
脂肪が少ないので太りすぎた個体に向くかも・・・・。マウスと違い低カロリーな餌。

冷凍鶉(成鳥・幼鳥)

鶏と同じ低カロリーな餌。オオトカゲの餌に頻繁に使われるようだが、アオダイショウやスジオ等の良い餌にもなる。

冷凍サル

多分、カニクイザル。そうそう売っている物でもないし、使うのは多分サルにしか興味を示さないと言う偏食を持った飼うのに恐ろしい程手間と金のかかるグルメなニシキヘビやボア

冷凍ヤモリ

うちは、これを使用しているが、手に入れるのが大変。

自分で作ろうにもそんなに沢山ヤモリを入手できないし、出来たとしても一度に取る量と捕獲回数からして捕獲圧を掛けることになるだろうから購入している。コストも若干高い。

カロリーは低カロリーでマウスを与える時よりも給餌回数を増やさなければいけない。

トカゲ食いの蛇に使える。

活ヤモリを使う場合の問題点として寄生虫問題があると思います。ダニと皮下線虫・内部線虫は怖いところで、これはカエルや魚等を与える際にも言えることだと思われます。

自宅やショップで幾ら駆虫しても進入経路を作っている以上、その駆虫作業は意味が無いし個体に負担を与えかねない。

また、安易に日本の爬虫類や両生類を餌として外国の爬虫類に与えると、外国の爬虫類にとって、日本の爬虫類の寄生虫に耐えられる耐性があるかどうかが問題になる。それは魚にも言える事だ。

かと言って、こいつは中国の蛇だから・・とかで使い分けられるほどヤモリは簡単に入手できないし、爬虫類ショップで売っているのはアジア等のヤモリを大量に捕獲したものかもしれないしで正体が分からないこともある。

そんな事を言っていたら与える餌が限られてくるが、生きたハウスゲッコーを与える際はヤモリの体をチェックしてダニや皮下線虫(剃刀で皮膚をちょっと切って取ってやるそうだ)を駆虫するくらいの事はしたい。

養殖ヤモリなるものはアメリカ等から来るそうだが高価でそんなに流通せず、アフリカだとかアジアだとかから来るWCに頼ることになるので、最低限の処置はしたいものだし、ニホンヤモリに関しては日本の蛇以外に与える場合には最終手段のような感じになる。

これはニホントカゲやニホンカナヘビにも言える事だし、アマガエル(カエルは寄生虫の宝庫)などにも言える事である。

逆のパターン、つまり、ハウスゲッコーを日本産の爬虫類食の爬虫類に与えるときも注意が必要。

早めに冷凍物に餌付かせたほうが良いし、その方が楽である。

まぁ、他にも色々あるけど、冷凍物はこれくらいかな・・・・。後は、変温動物用にワカサギだとか金魚だとか、昆虫食にはコオロギも使えるか。

 

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